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それには村田隼人も驚いた顔で黙り込んだ。
そして、弟さんは照れた顔で・・・
まさかの、わたしのことを指差した。
「俺、こいつの兄貴のことが好きだったんだよ。
高校3年間、ずっと。」
「私の・・・お兄ちゃん・・・?」
弟さんが・・・。
弟さんが・・・“木葉君”でもある弟さんが、そう言って・・・。
私は笑ってしまった。
「お兄ちゃんも“木葉君”のことが好きでしたよ。
“初恋”って言ってました。」
「・・・マジで!?
俺聞いてねーし!!!
俺が何度好きって言ってもあいつ何も言わなかった!!!」
弟さんがそう言って少し怒りながら、立ち上がっている村田隼人を見上げた。
「でも、後悔とかはねーな!!
自分の気持ち伝えてたし、なんなら無理矢理抱き締めたことまであるからな!!」
スッキリとした顔で笑っている弟さんを、村田隼人は揺れる瞳で見下ろしている。
「私の彼氏は隣のこの人なんですけど、私はそっちの人の彼女のことも本気で好きですよ?」
そう言って、今度は私が弟さんを指差した。
「ここまで好きだと、友情じゃなくて“恋”です!!
覚えてますか?ラブホテルの入口の前で私と一緒にいた女の子!!」
「・・・ああ、うん。」
村田隼人が小さく頷き、脱力したようにソファーにまた座った。
「私達もお互いに気持ちを伝え合っている仲です!!
村田さん、良いことも悪いことも世の中の何に対しても、年齢や性別もどんな血が入っていようと名前も関係ないんですよ!!」
「・・・兄貴から聞いたのか!!」
「お兄ちゃんの大好きな言葉で、私も大好きです!!」
弟さんと私が笑っていると村田隼人が口をゆっくりと開いた・・・。
そして・・・
「名前は関係ある・・・。
名前は関係あるよ・・・。」
そう放心状態で呟き・・・
「姫(ひめ)・・・。
箕輪の名前、姫だぞ・・・。
姫なんて、ズルイだろ・・・。」
「「それはズルイ!!
俺なんて、“弟”だからな!!!」」
弟さんと弟君が声を揃えてそう言うと・・・
村田隼人はローテーブルに置かれていた名刺に視線を移し、小さく笑った・・・
その時、秘書の男性が扉を開いた。
入ってきたのは弟さんと弟君のお兄さん、男さん・・・。
初めて会ったけどすぐに分かってしまうくらい、2人とソックリだった。
それと、見たことのない女の人・・・。
凄い美人な人・・・
「箕輪・・・」
村田隼人がまた小さな声で呟いた。
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