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弟さんと繁華街がある駅へ電車で向かう。 金曜日の夜、いつもの平日よりも電車の中は少しだけ楽しそうな雰囲気になる。 繁華街に近付くほどそういう雰囲気になっていく中、弟さんは何も話さない。 だから、わたしも何も話せなくて・・・。 電車の窓ガラスから見える夜の街を眺めるフリをしながら、窓ガラスに映る弟さんの姿を何度か見た。 そして、涼しい顔をしている弟さんの顔を見てから、自分の顔を確認した。 窓ガラスに映ったわたしは・・・普通だった。 どこにでもいるような普通の顔で、普通の身長で、普通の体型で、普通のスーツを着ている。 そんな普通の見た目のわたしが・・・ 普通の見た目でしかないわたしが・・・ 大変なことに、恋をしている乙女のような顔をしてしまっている。 自分でも分かるし、きっと隣に立っている弟さんも分かっている。 わたしは・・・ わたしは・・・ 弟さんに恋をしてしまった・・・。 こんなに格好良い弟さんに・・・ 見た目は普通なわたしが、恋をしてしまった・・・。
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