233人が本棚に入れています
本棚に追加
「木葉(きば)さん、女性を連れてきたのは初めてですね?」
カウンターの向こう側から、50代くらいの男性の職人さんがお寿司を握りながら笑っている。
プラネタリウムの後に来たのはお寿司屋さんだった。
回らないお寿司なだけではなくて、どこにもメニューや値段が書いていないお寿司屋さん・・・。
そんなお寿司屋さんのカウンター席に並んで座り、目の前に出されたキラキラと輝くお寿司を見る・・・。
カウンター自体がお皿のような役割なのか、大理石みたいな石のカウンターの上に輝くお寿司をそのままのせている・・・。
ここからどうやって食べるのか分からず戸惑っていると、弟さんは普通にお箸で食べていたのでわたしも同じように食べた。
そして・・・
美味しさのあまり悶えた・・・。
よくテレビで“口の中でとけた”と言っているけど、本当にとけた・・・。
わさびやガリまで、わたしが今まで食べてきた物と別物過ぎた・・・。
「そういうんじゃねーよ、会社の子。」
そう紹介されても悲しくもならないくらいにお寿司が美味しい・・・。
「そうですか~・・・?
今度お母様のご予約があるのでご報告しておきますね。」
「いらねー期待させんなよ。
きょうだいが次々に結婚してるからな。
早く全員結婚させて安心したいらしいから期待するだろ。」
職人さんは弟さんのお母さんのことも知っているらしい。
「俺の母親、クラブの“ママ”やってるんだよ。」
「そうなんですか・・・。」
「きょうだいが9人と血の繋がらないきょうだいが1人いて、最近立て続けに結婚してて。」
「ごきょうだい・・・そんなに沢山いらっしゃったんですか・・・。」
「父親が罪人なんだよ。
腹違いのきょうだいもいる上に、俺の名前を“弟”とか名付けやがった。
実際本当に罪人だからデカイ会社の社長も引きずり降ろされて、今は檻のついた病院に死ぬまで閉じ込められてる。」
「そうだったんですか・・・。」
初めて聞く弟さんのプライベートな話、それも結構ショッキングな話・・・。
でも・・・大変なことに、出されるお寿司が美味しすぎて頭の中は“お寿司美味しい!!”で埋め尽くされている・・・。
最初のコメントを投稿しよう!