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□真坂 みか........
「真坂(まさか)さん、定時だけど上がれそう?」
10月に入って初めての金曜日。
各部署から月初に提出された領収書を確認している途中で、中岡(なかおか)部長に聞かれた。
領収書から視線を移し、隣に立った中岡部長を見る。
凛々しいイケメンが優しく笑ってこっちを見ていて少しだけ焦る。
凛々しい系でここまでイケメンなのは中岡部長が初めてで。
そんな中岡部長が、私が手に持っていた領収書を見て少し怖い顔になった。
「小池(こいけ)、接待?」
大手製薬会社の経理部。
領収書の金額が1万円以上になる場合は、稟議書での申請となる。
私が持っていた稟議書に貼り付けられていた領収書には、営業部の女性社員である小池さんの領収書が。
「はい、小池さんの稟議書です。
今回も金額大きいですよね~・・・。」
「でも成績も良いからな。
それにしても、今回は2人を接待して10万超えたのか。」
そう言ってから、イケメンの美しい手でその稟議書を私の手から抜き取った。
「これ、来週俺が直接小池に確認してくる。」
「ありがとうございます!!!」
今年38歳、経理部の部長である中岡部長。
凛々しいイケメンは見た目だけでなく中身まで凛々しくイケメン。
そんな中岡部長が優しく笑い掛けてくれる。
「月初の飲み会、うちの部署を代表して頼むね?」
「はい!!行ってきます!!!」
中岡部長だけでなく、経理部の他のみんなにも向けて声を出した。
うちの会社では未だに飲み会でのコミュニケーションを大事にしてしまっていて。
上の年齢の社員達は結構喜んで出席している月初の飲み会。
各部署から最低でも1名、多くて5名まで参加可能な飲み会。
お会計は経費で落としているくらい、会社はこの飲み会を代々大切にしてきた。
でも・・・今年27歳になる私からしてみると、正直な感想だと時代錯誤かなと思ってしまう。
そんな飲み会に、今回は私、真坂みかが出席をする。
経理部は月末月初は忙しい。
なので毎回1人、それも平社員が経理部を代表して出席することとなっている。
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