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☆1
☆本橋 せいか.......
「本橋(もとはし)さん、定時だし帰ってね?」
10月が始まった。
調査員達の経費の精算がまだ途中なのに、美人な箕輪(みのわ)先輩が今日もわたしに声を掛けてくれる。
都内にある調査会社。
社長と取締役、事務の箕輪先輩とわたし、4人のデスクといくつかのキャビネットが入る小さな興信所。
所属している調査員やアシスタントは約20名いるけれど、事務所で仕事はしていない。
今年の4月にこの調査会社に入社をしたわたし、本橋せいか27歳。
10月になったのに事務所にいる2人の役員と箕輪先輩だけにしか会ったことがない。
事務所の経理・総務・労務の仕事を箕輪先輩としていて、小さな事務所なので全然大変ではない。
これは大変な仕事ではないのだけど・・・。
帰ろうと荷物をまとめていた時、事務所の扉がゆっくりと開いた。
自然と扉の方に視線を移すと弟さんだった。
この調査会社は兄弟で立ち上げた会社。
社長はお兄さんで、取締役は弟さん。
6歳上のお兄さんとソックリな見た目の、今年31歳になる弟さん。
日焼けした肌、サッパリとした整った顔、短髪だけどお洒落にセットしてある髪の毛。
身長は180センチ以上あって凄いマッチョ。
格好良い見た目なのは勿論だけど、凄い存在感で目が離せなくなる・・・。
「お疲れ!!箕輪、今日この後行ける?」
今日も弟さんが箕輪先輩に聞く。
箕輪先輩は少し悩んだ様子になった後にスマホの画面を操作した。
「今日は旦那の帰宅が早いみたいなんですよね、申し訳ありません。」
「それはしょうがねーな。
・・・本橋、今日金曜日だけど何か予定あるか?」
先月結婚をした箕輪先輩。
その箕輪先輩に断られた弟さんから、今度はわたしの予定を聞かれる。
「特に予定はないです・・・。」
金曜日の夜だけど何も予定はない。
少し緊張しながら弟さんに答えると、弟さんは困った顔で笑った。
そして・・・
「今から俺とラブホ行ける?」
と、聞いた。
誰かとお付き合いしたこともなければ、誰かとそういうことになったこともないわたしに。
そして、当たり前だけど誰かにそう言われたのも初めてだった・・・。
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