1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「ちくしょー。恋愛なんて、くそくらえー!!! 」
俺は自転車を漕ぎながら、叫んだ。八月の太陽が、俺を容赦なく照らす。吹き出した汗で、制服はびしょびしょだ。
15分後。俺は、浜辺に到着した。すると波打ち際で、一組の男女が手を繋いで立っていた。二人とも海の方を見ているので、顔は見えない。
俺は彼らに駆け寄った。俺は手に持った警察手帳を二人に見せて、大声で言った。
「こら君たち、今すぐイチャイチャするのをやめなさい! 急に爆発するかもしれないから、危ないぞ」
すると金髪ショートヘアの女性が振り返って、俺を見た。げっと顔をしかめた彼女は、隣のスーツを着た男の肩をたたいた。
「ねえ、タクヤ。警察よ。めんどうなことになったわ」
すると男性も振り返って、俺の方を見た。黒髪に赤い縁の眼鏡をかけていて、年はニ十歳くらいだろうか。タクヤは顔をしかめて言った。
「俺とミホは、本気で愛し合ってるんです。だから邪魔しないで下さい」
冷ややかな視線を向けてくる二人に、俺は諦めずに声をかけた。
「恋愛なんて、いつかは壊れてしまうものだ。一時的に夢中になっても、後から後悔するだけだぞ。わかったら、今すぐここを離れなさい!」
しかしタクヤは俺の言葉を素直に聞かず、大声で叫んだ。
「うるせぇな! 俺はこれからミホにプロポーズするの! だから、黙ってそこで見てろよ」
するとミホも、俺を睨んで言った。
「さっきから恋愛のことを分かったふうに言ってるけど、お巡りさんは恋をしたことがあるの?」
その質問に、俺は一歩後ずさりをした。脳裏に浮かんだのは、最愛の妻・ナツミだった。
最初のコメントを投稿しよう!