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「あれ、未希じゃん」
そこでふと声をかけられた。視線を動かすと、そこには麻美がいた。彼女は中学時代からの親友で、進学した高校は違うが、メッセージのやりとりは続けている仲だ。
「またママさんに買い物を押しつけられたか。この炎天下に、どうせくだらない用事でしょ。まあ、あたしも似たようなものだけど」
さすがは心を通わせた友だ。進学以来会っていなかったが、こちらの事情は分かってくれている。未希は微笑み、一つ訊ねた。
「麻美は何を頼まれたの? 私は百均のウェットティッシュ」
言うと、彼女は悪戯っぽく表情を崩した。
「あたしは祝儀袋。来週、従姉のお姉ちゃんが結婚式だから」
二人は揃って笑った。
「いま必要かって話だよね」
「ほんとほんと。陽が暮れてからでも間に合うっつーの」
互いにアハハと笑った後、未希は彼女に提案した。
「例の公園で少し話さない? あそこなら少し涼しいし」
その公園は近所にあり、木が多くて池があり、ベンチを選べばこの暑さでも多少の話ぐらいはできそうなところだ。
「いいねえ。あたしも未希に話したいことあるんだ。まあこの暑さだし、二人とも長くはもたないだろうけど」
話が決まると、麻美は冷蔵ケースから2リットルの水を取り出して会計した。彼女いわく、500ミリリットルのボトルより冷たさが長持ちするのだそうだ。水分摂らなきゃ死にかねないからね、と笑っていた。
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