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消防団で研修してきたよ!
「防災訓練?」
俺はヒロの肩越しにラップトップをのぞき込む。
12インチの小さめの画面。
ひくっとヒロの肩が緊張した。
「ごめん。耳って、弱くて」
耳に俺の息がかかったらしい。
「弱いの?」
ヒロの左耳を隠しているさらさらした髪をかき上げる。
片耳だけ真っ赤になっていく。面白い。
大家と入居者が連絡を取り合えるアプリ、というのがあるらしい。入居者から大家への居室の修理依頼だとか。
でもアルファ・ビルヂングの場合は、エントランス前の掲示板が一番有効だし、何か用がある奴らはヒロのところに直接やって来る。
ほら、今もドアベルが鳴った。
このマンションの場合はまさにベルって感じで鳴るんだ。リンって。
「ありがとうございます。どうでしたか? 消防団の皆さんとは」
ヒロが玄関扉を開けた。
俺はコウタロウを抱いて、その様子をのぞき込む。
「すっごいノリノリでいろんなこと教えてくれたよ~。ポンプ車のホースも持たせてくれたし。Happyも!」
イケメソ、というTシャツを着た高身長の銀髪男がはしゃいだ声を上げる。
「ハッピな。それ、着るやつな」
黒髪の細身の男が銀髪男にすかさずツッコミを入れる。
漫才の修行に来た欧米人と日本人の相方か?
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