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漫才コンビの後ろからお面がのぞいた。
お面。
いや、冗談じゃなく、お面。
外廊下に流れてきたスパイスの匂い。
こちらを向いてる金色の面の口元からは、ご丁寧に牙まで見えている。
「こんにちは、マスター」
ヒロが呼びかける。
ヒロも、漫才コンビもテオ&ミカのでれでれコンビも驚く様子もなく挨拶してる。けど、俺はびびった。
「誰?」
俺はヒロの顔を見る。
「ワヤンクリのマスターだよ。502と503をお店にしているんだ」
絶対怪しすぎる店だ。
確かに、学校から帰ってくると不思議な音楽が聴こえてくることがあったんだよな。
そういえば501も、どことなく影のありそうな男が入っていくのを見かけたし。
「ヒロ。もしかして、五階って怪しい男ばっかり?」
怪しい、のあたりでヒロが慌てて俺の口元を押さえた。
「怪しいかなあ」
ミカがくりんくりんの金髪を揺らしながら首を傾げ、テオがその頬に口付けた。
「口をふさぐなら手じゃなくて、キスの方がいいね」
「そういう問題?」
いちゃつく金髪と黒髪の背後で、漫才コンビがもぞもぞし始めた。
「名言を知ってしまった」
「口封じならキスってこと?」
「口封じっていうのは、ちょっと違うんじゃ」
何でもいいから部屋でやれ、と言いかけた俺の口元を、またヒロが押さえる。
「ではまた、明日の訓練で」
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