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少年がソファの上で姿勢を正し、傍らの犬を膝の上に抱き取った。
ソファの、犬がくつろいでいたあたりの場所をあごで示す。
要するに、隣に座れ、ということだろう。
ヒロさんが紅茶のおかわりを淹れに立ち上がったのを横目でみながら、おずおずと少年の隣に移動する。
「もう、やった?」
音のする勢いで彼の目をのぞき込んでしまった。
「あの女の子、あんたの生徒? もうやった?」
少年はわざわざ英語で言い直した。
Did you sleep with her last night?
ぱくぱくと酸欠のように口だけを動かしてしまった。
言葉が出てこない。なんだなんだ。この子は吉岡と話をしたんだろうか。
吉岡が俺の部屋に来たところは見られてしまったけれど。どこまでバレてる?
いやいや、後ろめたいことなんて、何もない。ような、あるような。
「あんたは稼いで税金を払ってるだろ?」
こくこく、と俺は首を上下に動かした。
「家賃も滞納してない。そうだろ?」
少年は馬鹿にした様子でもなく、ごく当然のように言った。
「じゃあ、いいんじゃん? やってても」
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