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観覧車
塚本十三(15歳・男性)
家族、恋人、友人、何なら一人でも!
皆が楽しい楽しい遊園地!
そこで働くスタッフはもちろん大変だろうけど、そこにいる皆が楽しい空間。
僕は今、そんな楽しい楽しい遊園地に来ている。
だけどびっくりしたよ。
そんな楽しい楽しい遊園地に地獄があったなんて。
僕は天国も地獄も神も仏も信じてはいない。
そんな僕に"地獄は有るんだぞ"と何者かが警告の為に、こんな楽しい遊園地に地獄の門を用意したらしい。
そして僕はその門をくぐってしまったみたいだ。
そう、その門は観覧車の入り口の形をしていた。
僕はクラスメイトの丘光花江と二人っきりで観覧車に乗ったんだ。
僕は中学生活最後の夏休み、一念発起して彼女を誘った。
まさか来てくれるとは思わなかったよ!
それは天国じゃないのか?確かにそうだね、地獄の門は天国の香りで人間を誘い込むのかもしれない。
僕は綿密な告白プランを立てていた。
丘光さんと観覧車に乗って、観覧車が頂点まで昇ったタイミングで、絶景の景色に感動している丘光さんに思いを打ち明ける、というプランだ。
だが、現実は予定通りにはいかないものだ。いや、その計画には僕が舞い上がって頭が真っ白になるという想定が全くなされていなかった。
観覧車の中で丘光さんと二人っきりになった事で、僕の思考回路は完全にマヒしてしまい、観覧車が動き出して1分も経たないタイミング、まだ地上から数メートルも離れていないのに
「好きです、僕と付き合って下さい」
言ってしまったんだ。すると丘光さんは即答で
「無理」
2文字で拒絶された。
その後、密室の中で視線も合わせず会話も無く14分。一周する僕たちの観覧車の中は地獄だったよ。
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