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出口
岡崎春奈(28歳・女性)
いつもは、こいつら下らないなと適当に相槌を打つだけ。
私は何も話さないし、思わない。
まあ、こういうものだろうと自然に受け流す、それが私。
しかし、今日だけは違った。
今日だけは機嫌がMAX悪かったのだ。
仕事のミスをあのお局主任の佐馬場木鳥代に押し付けられた。
無能なくせに部長の親戚というだけで主任になった佐馬場木。
あの女の理不尽は社内の誰にも止められない。
給湯室で行われる女事務員たちのヒソヒソ噂大会。
いつもは聞き手の私だったが
「あのクソゴネブタ女、出来る女のつもりかよ!ムカツク!」
と叫ばせてもらった。
少しスッキリした。なるほど、陰湿な行為の様な気もするが、たまには声に出してみるものだ。
私は気を取り直して持ち場に戻ると、すぐに佐馬場木主任から声を掛けられた。
ん?もしかしてさっきの私の叫びを聞かれたのか?
そう思って少しビクつきながら佐馬場木主任のデスクに向かう。
「な・・・なんでしょうか」
「ああ、岡崎さん。さっきはごめんなさいね。あれは私のミスだったわ。貴方に不愉快な思いをさせてしまいました、ごめんなさい」
な・・・いや、そんな風に謝られるとは思わなかった。
私は佐馬場木主任を誤解していた様だ。
「いえ、そんな、私にも落ち度がありました。気にはしておりません」
まあ気にしていたし、私に全く落ち度はないが、そう答えるのが社会人だ。
「そう良かった、またよろしくね」
「はい」
「なんせ私、出来るつもりのクソゴネブタ女だからさ」
誰か、私にこの地獄の出口を教えて下さい。
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