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月に願う
待ち合わせの時間より少し早くついて、お化粧を直す
そんな時間ですら胸が高鳴る
ボディオイルを香水がわりに、胸元と耳元へ塗る
今日も素敵だと思ってくれたらいい
待ち合わせ場所でドキドキしながら彼を待つ
帷の降りた夜の街で後ろからそっと抱きしめられる
お待たせ
その声その温もりで全身に喜びが駆け巡る
私も今きたとこよと言いながら振り返る
少女の時代はとっくに通り過ぎたというのに、一瞬で少女のようなときめきが湧き上がる
溢れる好きを隠して
会えた喜びも隠して悠然と微笑む
形のない関係
いつ終わるかわからない
会うのは今日が最後かもしれない
そんな関係は寂しい
次も会えますか?
いつ会えますか?
次の約束がほしい
私は貴方を想う
貴方は私を想ってくれますか?
会えない時間に私を想って
触れたいと抱きしめたいと想って欲しい
よければこの日はどう?
軽いお誘い
仕事のついで
そんな誘いが嬉しいの
次の約束がないと不安
形のない泡沫の関係だから
不安が打ち寄せる波のように私を飲み込む
次の約束だけが灯台のように行き先を照らす
不安の海に溺れていく私に
灯りをともして欲しい
恋人とも違う
曖昧で不確かな関係
繋いだ手の温もりが恋しい
声が聞きたい
笑顔がみたい
触れたい
好きでいて
私だけ見て
そんなことが言えたらいいのに
可愛くあなたが好き
言えたらどんなによかったか
思う気持ちに蓋をして
あなたは多くの遊び相手の1人よと
好きじゃないふりをする
私の心を満たすのはあなただけ
欲しいのはあなただけ
この想いに気がつかないで
遊びのままでいい
どうせ通り過ぎていくただの過去になるんだから
ただの遊び
今日も私は高飛車で傲慢な女のふりをする
あなたの前で冷たい女を演じ続ける
それがなけなしの矜持かもしれない
傷つきたくない
遊びだもの
傷なんてつかない
でも私だけが知っている
これが最後の恋
月灯も電気もいらない
目に宿る慕情を闇が包んでくれる
瞳を閉じて
溢れ出す想いに蓋をして
帷の降りた夜の街で
緞帳をあげる
暇だったから遊んであげる
あなたはただの遊び相手
この恋が終わるまで
演じ続ける
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