私はだれ

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私はだれ

 私はアンリと言う名前らしい。自分のことなのに、らしいと言う表現がおかしいのはわかる。  ふと目が覚めた時、 「おぉ、アンリ。やっと気がついた」と声をかけられたのだ。  アンリ……って誰?  声のかけられた方を見ると、見知らぬ人が心配そうな顔をして私を見ていた。  私には全く見覚えのない人。 「あの、あなたは誰ですか?」と聞いてみたのだけれど。その人は少し驚いた顔をして、 「アンリ、大丈夫かい? 倒れた拍子に頭を打ったりして、記憶が混同しているのかな」と、首をかしげながら話す。  私の質問の答えにはなっていないですがと思いつつも、ハッとした。   記憶……? そうなのよ、いったい、ここはどこ、私はだれ状態。頭が真っ白で、本当に記憶がないみたい。  頭の中かパニックになっていることを悟られまいと、私はその人に同じ質問を繰り返した。 「あなた、どなた?」  その人は、白衣のような物を着ている。顔には銀縁眼鏡。白髪混じりの黒髪。年齢は四十代位だろうか。  その人は私の方を見ながら、 「私はここのクリニックの医師、森野と言います」 「……お医者様なんですか?」 「そうです。今朝方、あなたは私のクリニックの前に倒れていたので運び入れました」 「倒れていた、ですって?」
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