【第三幕】

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 しばらくして、郁海の部屋に三人が集まり自慢の手料理をご馳走になった際だった。  祥真にこっそり礼を言われ、咄嗟に理由がわからず訊き返して知らされる。  どうやらこの後輩が豪胆にも、雅と別れたその足で部室へ行き告白したらしいことを。  結果的にキューピッドになってしまった、あるいはさせられたということになるのか。  二人の想いが通じたことが、幸せに繋がるのなら。  取り返しがつかないと頭を抱えた己の失態も許されるかもしれない、と強引に自分を宥めていた。  それでも決して姑息な打算だけではない。  心から大切な友人と後輩の行く末が彼らにとって良きものであるように、と祈るこの気持ちに偽りはなかった。
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