【第二幕】

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 彼は誰とでも当たり障りなく接することができる人間だ。  世話焼き体質なのは皆が知るところだが、それ以外は郁海の本質ではない気がした。  それこそ常に仮面を被っているかのように、「人当たりよく気さくな郁海(自分)」を演じているのだろう。  実際には、彼は雅と同じく強気で頑固なところもある。  気心が知れて来ると、郁海は雅を部屋に呼んで趣味の料理を振舞ってくれるようになった。  互いに構える必要はなく、共に過ごして快適な相手。  片付けができない彼の生活の場はいつ行っても雑然としているため、雅が食事の礼代わりに一通り掃除して帰るのが恒例になっていた。  常に洗濯物が無造作に放り出されている状態で、郁海の選ぶ服の基準にも納得が行く。  寮は自炊なのでやむを得ずしているものの、別に料理好きでもない雅とはまさにWin-Winの関係だと感じていた。  本当に貴重な友人を得られて、それだけでもこのサークルを選んでよかったと思える。
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