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郁海が、四年生になったときに入部してきた新入生を特別視するようになって行ったのもそうだった。
きっと彼は祥真が、……その後輩が好きなのだ、と雅には伝わったのだ。
見た目がいい、演技が上手い、といった表立って突出した部分があるわけではなかった。
しかし、素直で人懐こくてなんでも一生懸命な、真に「いい子」だと雅は感じていたのだ。
同級生の一部と少々摩擦があるのも知っている。
それさえも、誰にでも好かれやすい、悪い意味ではなく懐に入り込むのが得意なタイプなのが影響していそうだ。
端的に言えば「上級生に可愛がられている、実力不相応に目を掛けられている」と見られているのだろうか。
本人たちだけで収まらない、あるいはエスカレートするようなら、と注視していたものの、祥真は上手く受け流していた。
正直、年齢性別を問わず「恋愛対象」よりは「弟キャラ・マスコットポジション」という印象が拭えない存在だった。その祥真を選んだ郁海は見る目がある、と雅はどこか感心したのだ。
雅には何もできないし、それ以前にする意志も必要もなく、知らぬ顔で通す以外の選択肢など存在しない。
それなのに。
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