【第三幕】

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 郁海が祥真を好きなこと。  友人が絶対相手には知られないようひた隠しにしていた事実を、雅はうっかり漏らしてしまった。  郁海にすぐに返さなければならない資料があったのに教授に呼ばれて叶わなくなり、「どうしよう」と焦って同学部の下級生である祥真に頼んだのだ。  学部が違うため、講義棟も遠い郁海のもとに直接行く余裕がなくて。 「俺でいいんですか? 副島さん、こういうの他人に見られるの嫌がりそうですし……。いや、俺は絶対中身なんか見ませんけど!」 「だから君に頼んで──! ゴメン、忘れて! 今のは聞かなかったことにして! いいわね!?」  後で思い返してみれば、別に失言というほどのことでもなかった。 「郁海が可愛がってる後輩だから。原田(はらだ)はあいつに信用されてるから大丈夫だよ」  そういう意味だ、で十分通せたはず。  なのに雅は、パニック状態で自分から「今のは秘密なんです! 君には知られちゃいけないの!」と暴露したも同然になってしまった……。
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