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◇ ◇ ◇
いつものカフェテリアでコーヒーを飲みながらの、なんの変哲もない日常会話の中。
「あいつと付き合うことになったから」
郁海がさらっと告げて来た。
あまりにも自然で、一瞬「へぇ」と流しそうになったくらいさり気なく。
相変わらず端正な美貌には不釣り合いなカジュアルファッションにも見合う、何の気負いも感じない口調は計算されたものだろう。
──あたしがやらかしたせいか。
友人の言葉の意味を理解して、雅の頭にまず浮かんだのは数日前のあの出来事だった。
詳しくは知る由もないが、郁海から想いを告げることはありえない。
彼は、……少なくとも雅の知る友人としての郁海は、いったん隠すと決めたなら貫き通す。
ましてやなんとなく目と目で、などお伽噺だ。
どう反応していいかわからないままの雅に、郁海は意識的にか無意識にか話題をすぐ別に移してしまう。
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