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劇団内の公演には何度も出たことはある。
主演級とは程遠い端役だったものの、それでも雅は嬉しかった。
矢継ぎ早に飛んでくる厳しい指摘に、応えられない自分が悔しくもあり影ではよく泣いたものだ。
けれど、地方のこの小さな劇団でたとえ主役になったとしても『スター』にはなれない気がした。
テレビや映画に出て注目を浴びたい、有名になりたいわけではない。純粋に、どこででも通用する役者になりたかった。
本当にそれだけ。
少しでも上を目指したくて、大劇団が地元で開催するオーディションをいくつも受けた。
しかし結果は全滅。結局雅の実力はその程度、だったのかもしれない。
雅は自分でも、見た目はいい方だと思っている。
ただし、どう見ても「可愛い」より「恰好いい」と評される容姿なのもまた理解していた。身長は百七十センチで中性的な顔立ち、異性より同性に人気のあるタイプだ。
「雅には女優よりモデルの方が向いてるんじゃないかな。その気あるならちゃんとしたとこ紹介するよ」
中学に入ってすぐの頃だった。劇団の演出家に言われた言葉は、今も雅の脳裏から消えることはない。
……つまり「演技では無理。『子ども』の今はなんとかなっていても限界が来る」と遠回しに通告されたようなものだからだ。
結局雅は、中学卒業と同時に劇団を辞めた。
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