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【終幕】
大学を卒業したら、雅は演劇は趣味にすると決めた。
演じることは好きだから芝居そのものは細く長く続けたいと考えてはいるが、『仕事』にする気はもうない。
逆に、それまでは一筋の希望は持っていたのだ。心の奥底の、どこかでは。
改めて決意したら、なんだかとても晴れやかな気分になった。
雅は長い時間を無駄にしてしまったのかもしれない。
叶わないと自分でも理解していた、見果てぬ夢を追いかけて。
それでも、悩んだことにもきっと意味があった。いや、意味を持たせるようにすればいい。
そう思えること自体が、きっと費やした時間から得たものだ。
郁海のことを、普段から演技していると感じていた。今もそれは変わらない。
けれど。
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