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◇ ◇ ◇
幸いなことに、雅は現役で第一志望の大学に合格できた。
世間的な評価は間違いなく一流の大学であるし、「東京なんて……」と娘を遠くに送り出すことを渋っていた両親も「桂銘なら」と許してくれて上京して来た。
寮の入居選考に通ったのも幸運だった。金銭面の負担が段違いだからだ。やはり東京は家賃が高い。
かなり希望者が多くて激戦だ、と知っていたからこその喜びもある。北海道からというのも大きかったようだ。
「遠方出身者が優遇される」
選考基準に明記はされていないが、過去の実績からはまことしやかに囁かれていると入寮してから聞かされた。
実際、経済的に困窮しているわけではない雅が選ばれたのだから、あながち『噂』ではないのではないか。
雅の実家は相対的には裕福な方だと思うが、「金が有り余っている」とは到底言えない状態だ。
東京の大学に行かせてもらえること自体感謝しているし、少しでも親の負担を減らせた方がいいに決まっている。
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