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【第一幕】
高校時代の三年間離れて冷静になったことで、やはり雅は芝居が好きだという結論に達した。
このまま止めたくない。……忘れられない。ステージでしか得られない高揚や満足感が。
そのため、学内にいくつもある中で見学して一番自分に合っていると感じた演劇サークルに入部したのだ。
特に気にしてはいなかったが、規模は大きい方になる。
当時三年生だった脚本と演出担当が、学生演劇界隈ではかなりの有名人だったらしい。
祠堂 リュウ。非常に有能で、しかしその能力を凌駕するほど傍迷惑な個性の持ち主ではあった。
新入生歓迎会は、何故か部室で催された。
もともと外で飲み会はあまりしないサークルだ、というのは入部してみるとすぐにわかる。
二か月に一回は公演を打つため、その準備や稽古で時間が取られるのが大きいのか。
「副島くん、経験者?」
「劇団入って演技とか学んでたか、って意味ならNO」
たまたま隣の席だった男子に問い掛けた雅に、彼は気軽な口調で返してくれる。
自己紹介は一通り終わって、すぐ傍のメンバーの名前だけは覚えていた。
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