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加えて歓迎会の場では、新入生だけではなく十代の学生は全員アルコール禁止が徹底されていた。
普段はともかく、と言ってしまうのはまずいにしろ、新歓時期の学内の飲酒は大学側の監視が厳しかったらしい。
「見城さんだっけ? あんたは?」
「中学までは劇団でやってた。高校は勉強に集中したくて辞めたんだ。……どうしても桂銘大学来たかったからさ」
勝手に零れて出る言葉。
無意識に見栄を張っている己が堪らなく情けなかった。そんな前向きな理由ではない。
単に挫折して逃げ出しただけの負け犬に過ぎないのに。
「聞いた感じ、やっぱ本格的にやってた奴が多いみたいだな」
雅の内心の自己嫌悪など知る由もなく、軽く頷く郁海。
最初に顔を合わせたとき、現実離れした美しい容貌に目を奪われて逸らせなかったのは記憶に刻み込まれている。あまりにも綺麗すぎて逆に引いてしまったくらいだ。
身につけているものはごく普通で、他の男子学生と何ら変わりはない。それがかえって類稀な素材を引き立たせているとさえ感じた。
──何こいつ、男なのにこんなのってあり? 当然だけどノーメイクなのに。
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