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劇団にいた時に、演技の参考にとアドバイスされて始めた人間観察。
もうすっかり習慣になってしまい、無遠慮に見つめないことにだけは気を配っている。
その時もあからさまにはならないように、さり気なさを装い彼の頭の先から机に隠れている部分以外にさっと視線を走らせた。
赤味がかった茶髪がまず目に止まる。瞳も赤茶で、頭頂部のあたりも染めている感じではないから天然の色だろう。
雅の緩い天然パーマとは違って、風にそよげばサラサラと音がしそうなストレートの艷やかな髪。
大学入学を期に、高校までの校則では禁止されていたことをすべて試した。せっかくの期間限定の自由を余さず満喫してみたくて。
個性を発揮すべく、焦げ茶の髪を金に染めてピアスも含め自分に似合うと自負する好きなファッションを楽しむのが嬉しかった。
そんな雅とは対局の、すべてがありのままでいて一際目を惹く、彼。
身長は、その時は座っていたから正確には推し量れなかったものの、雅とほぼ同じだとのちにわかった。
すぐ隣の椅子のため至近距離で見ると、くっきりした二重瞼で長い睫毛に縁取られた瞳が煌めいている。
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