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母は完璧な人だった。
結婚前からの仕事を、葉月が生まれてからも今までずっと続けている。
何もしない父を当てにすることもなく、家事もすべて一人で担って。
せめて何か手伝おうとすると、必ず止められた。
「いいのよ、これはママの仕事だから」
優しく告げて、葉月の相手をするために中断した作業に戻る。
いつも忙しくしていた母。とにかく時間がない中で子どもの半端な手伝いなど迷惑だったのだろう、と大学ももうすぐ卒業する今の葉月ならわかる。
やり直す分だけ時間と労力が無駄になるからだ。
葉月は母を尊敬している。
一人っ子だがあまり構われることもなく、なんでも自由にさせてくれた。
習い事も進路も、葉月が決めたことに反対されたことなどない。
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