突然の出会い

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いつものように公園をひたすら走っていると、 遠い前方から男性の走る姿が 突如として私の目に入ってきた。 見たことのない男性の姿だった。 だんだん近づくにつれ、 その男性の容姿や体型が鮮明に見えてきた。 髪型は黒髪で短髪。 目鼻立ちははっきりしていて、端正な顔立ち。 俗に言うイケメンである。 おまけに長身ときたら 男性とはほぼ無縁の私でも 自然と目が向いてしまうのは致し方のないこと。 男性とすれ違うその時が 刻一刻と近付いてくる。 3m__、 2m__、 1m__、 二度と拝めないかもしれないそのイケメンを できるだけ間近で見たい欲が出た私。 男性の顔を見たい一心で気を取られた瞬間、 走るペースが乱れてしまった。 あろうことか、その男性とすれ違うと同時に 足をくじいてしまい、私はその場で転倒……。 「ぃっ…たたたたたっ…」 男性はすぐさま私に駆け寄ってくれた。 「大丈夫か?」 あぁ……なんともみっともない姿を 寄りにもよってイケメンの前で…… 穴があったら入りたいと心から思った。 「だ、大丈夫です……」 恥ずかしさの余り、この場をなんとかして逃げたくなった私は、痛い足を我慢して立ち上がろうとした。 だけど右足に体重をかけると激痛が走り 自然と力が抜けて、膝から崩れ落ちた……。 「危ない! 無理して動かさない方がいい」 そう言って、その男性は 私の腕を取り、自分の首に回し肩を貸してくれて 近くのベンチまで連れて行こうとしてくれた。 その男性に肩を借りても尚、足は激痛。 これ以上迷惑はかけられないと思い 私はひたすら我慢して歩いた。 「痛い」とは声には出さないものの、 自然と眉をしかめ、顔が歪んでしまう。 「痛いか?」 男性は私の表情を見て察してくれたのだろう。 回していた腕を下ろし、突然私を軽々と抱きかかえ歩き出した。 申し訳無さが倍増した私は 「歩けます…… 歩けますから!」 必死に地面に降りようともがく私。 「しっ! 黙って」 申し訳ないと思いながらも、この時の私は 男性の言葉に従うしかなかった。 男性に抱きかかえられ 冷静になってきた私はあることに気づいた。 温かくて大きな手、太く逞しい腕、分厚く逞しい胸板、少しもブレない体幹。 なんて安心感のある腕の中なんだろう……。 足の痛みを忘れ、しばらくの間 その男性の腕の中を堪能してしまった。 「よし、ここでいいか」 そう言って男性はベンチに私を座らせ 私の前に立ち、私と目線を合わせるかのように しゃがみ込んだ。
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