裏切り

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裏切り

****************** 「柚葉さん2年連続功労賞、おめでとうございます」 「秋月、倉木ペアには適わないですね」 職場の皆から祝いや称賛の声ともに私、秋月柚葉(あきつきゆずは)のグラスにはなみなみとビールが注がれた。 私はその度に「ありがとうございます」と一向に減らないグラスに愛想笑いを浮かべながら、息を吐く。 お酒は強い方だとはいえ、そろそろ限界を迎えている。 隣の席に長時間居座っていた常務がトイレに席をたって、漸く解放された私はホッと一息ついてビールを煽った。 すると、再び後ろから「秋月さん、おめでとうございます」と女性の声が聞こえてきた。 ああ、やっと解放されたと思ったのに...。 そう思いながらも、「ありがとうございます」とニッコリと営業スマイルを張り付けて振り返った。 「って、栞奈かっ」 私はその声の主が気のしれた同期の北村栞奈(きたむらかんな)だと分かって、すぐに素の顔に戻した。 栞奈は「何、その作ったような笑顔っ」とからかい交じりに 先程まで常務が座っていた席に腰を下ろした。 そんなに違和感のある笑顔だっただろうか.. 私は栞奈に作ったような笑顔と指摘され、思わず頬に手が伸びる。 「人気者は大変ね。河神常務、1時間10分も柚葉嬢(ゆずはじょう)の隣を陣取ってたわよ」 栞奈は腕時計に目を落としながら顔をしかめた。
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