泥棒指南

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ある処の拘置所でふたりの男が同じ房となった。 「あんたは拘置所は初めてか。おれは盗みで捕まった。  なんで捕まったんだ」 「私はなにもしていない。誤解なんです」 「どんな誤解だい」 「見守っていただけなんです。好きな女性をのあとをつけたり、  ごみを漁って生活をチェックしたり、無言電話を掛けたり」 「ストーカーじゃねえか。ははあなるほど、  ストーカーの容疑で捕まったってわけか」 「私はそんなもんじゃありません。  彼女が好きで気を引きたい一心で  生活習慣を調べ上げ、ボディーガードのように  あれやこれやと心を砕いてそばにいただけなのに、  逆に通報される始末。ストーカーだなんてひどい。  こんなに好きなのに、どうして彼女に逃げられるんでしょう」    やっぱりストーカーじゃねえかと泥棒は言った。   「バカだなあ、女のケツってのは  無理に追うから逃げられるんじゃねえか。  押してダメなら引くんだよ。女に追われる側になっちまえ」 「そんな方法があるんですか」
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