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勘違い
授業は、一時間来なくて、休み時間になると、ぐったりした顔で戻ってきた。
「うぅ…疲れたぁ……。一樹癒して〜…」
癒すって何すればいいんだ?首を傾げると、ニコッと微笑んで、「ぎゅーして!」って言われた。
「?そんなことで癒されるか?」
「うんうんうん、癒しでしか無いよ」
「そ、そうか…」
食い気味な早瀬に少し引く。
人懐っこいし、所謂犬系男子ってやつなのかもしれない。
早瀬は、しゃがんで俺を抱きしめた。
「…早瀬、これはお前が俺をハグしてるぞ」
「うんうん、いいの。これも癒されるから」
コイツは謎が多すぎる。
変に身体動かさないで済んだし、まぁ楽か。と思いながらも、俺も早瀬の背中に手を回した。
「っ?!」
「早瀬…お前の(身体)デカいな」
「いや、今それ言うぅ?!ていうか、僕ホント今やばいんだけど…!!」
「は?何言ってーー……」
「あぁーっ、無自覚で煽ってるの?タチ悪すぎ」
「??お前マジで大丈夫か?」
心配になって、引き離して顔を見ると何故か耳まで真っ赤にして目を泳がせていた。
「いや…全然大丈夫じゃない…これそのうち自制効かなくなるから……」
ブツブツと独り言のように呟く。
「ん?何?」
「なんでも無い」
「早瀬最近変じゃ無いか?」
「え?そう?」
「あぁ。反応が過剰だし、俺と目を合わせようとしない」
「へっ?!そ、そ、そんなことないよ〜!」
声上擦ってるし…嘘下手か。思わずクスッと笑ってしまう。
「なぁ、俺の嫌な所あるなら言って。怒んないし改善するから」
「……あるよ」
「そうか」
「でも、多分改善とか無理だよ」
「??言うだけ言ってみろ」
緊張したように、息を吸ってから真剣な顔をして言った。
「一樹が可愛すぎるっ!」
「……」
「……」
は?…え?どいうこと?
てか、「言ってやったぞ!ドヤッ」みたいなのやめろ。可愛いけど。
「それは……俺はどうやって改善を?」
「だから無理だって言ったじゃん〜!」
確かに無理だな。てか、早瀬の目を改善した方がいいかと思うけど。
そう思う反面、すごく嬉しかった。
だって今まで皆、「顔がいい」「顔だけがいい」ってそれしか言わなかった。けど、早瀬は多分友達だと思ってくれてるし、楽しそうに接してくれる。その上、「可愛い」って言われたら本心なんじゃ?って思ってしまう。それくらい嬉しかった。
「……まぁ、ありがと…」
急に恥ずかしくなって、顔を逸らす。
「っ!!……はぁ、無理好き」
そんな声が聞こえて、くるりと振り返ると、至近距離に顔があって、心臓が跳ねた。
なんだかよく無い雰囲気な気がする。
「一樹……ホントに、真剣に好きだよ」
「っ……は、やせ…?」
「ねぇ、早瀬ってヤダ。拓馬って呼んで?」
「うん…でも、その前に退いて…?」
「呼んでくれたらね」
「拓馬っ、お願い。退いて」
「っ〜ッ!!」
言うと、すごく驚いたような顔をして、更に近づいてきた。
かと、思えば、お互いの唇が触れた。
「えっ…?!!」
「っ、ごめん…可愛すぎて我慢できなかった」
「待っ、待って!」
「なに?」
「もしかして可愛いって俺の事恋愛対象として見てたってこと?!」
「そうだよ?…まさか……」
てっきり、友達としての「可愛い」「好き」だと思ってた。
早瀬は、すごく深いため息をついた。
「びっくり…。とっくに気づいてると思ってたよ」
呆れたように言いながらも、可笑しそうに笑った。
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