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15回目の誕生日
一
フレディ国王の生誕16年目を祝うパーティーが行われている大きな城を遠くに眺めながら、私はため息をついた。
「もう一年早く生まれていたらなぁ……」
フレディ国王は、この国で成人とされる16歳になられた。それを祝う今日は、貴族や平民の中でも、成人している者のみがパーティーに参加できるのだ。
「来年はフレディ国王に会えるから、我慢しておくれよ。ベル」
今朝。護民官をしている父は、馬車に乗る前にこちらを振り向いて言った。
「来年お会いできるのを楽しみにしておりますとお伝えくだされば十分ですわ、父上」
私が笑って答えると、父は申し訳なさそうに笑って頷いた。すると馬車の窓から姉が声をかけた。
「気をつけてね、ベル」
「あら。それは私の言う言葉ですわ、プルーン姉様」
「そっ、そうね」
姉、プルーンはぎこちなく笑った。緊張しているのだろうと思った私は、特に気に止めずに二人を見送った。
正直、父や姉がとても羨ましかった。国の北端にある高い山に埋もれてしまうほど、大きな城が小さく見えてしまうこの場所からでは、城の中の様子など全く見えない。だから、城の中にいるフレディ国王の姿なんて見えるはずがない。分かっていても、この時間をフレディ国王と共にしていると感じたかったから、私は城を眺めた。
風に乗ってくるのは、家の庭になっている林檎の花の匂いだけ。フレディ国王の城の大きな花園に咲く薔薇の匂いすらしないことに少し落胆した私は、部屋に戻ろうと城に背を向けた。すると、窓から何者かが入ってきた音がして、振り向こうとすると私の首元に短刀が突きつけられた。
「騒ぐな」
低い声だった。ドンッ。と重い衝撃がうなじかに走り、私は気を失った。
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