11月7日、午後

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 ログと設計書を見比べているうちに、夕方になっていた。  私の昼休憩の時間はどこに行ってしまったのだろう。この空腹感からくる吐き気は誰が助けてくれるのだろう。 「今日は長引きそうですね」  片瀬くんの声で私はゆっくり振り返り「そうだねー」と答える。 「片瀬くんはちゃんと帰りなよ、新婚なんだし」 「え、気を遣ってもらわなくても」 「帰ったほうがいいよ。家庭は大事にしなきゃ。わ……」 「……わ?」 「なんでもない」  私は前へと向き直り、ダウンロードされたログファイルを開いた。  危うく「私は帰っても待ってる相手なんていないし」と言うところだった。  つい数日前までは家に帰れば、待っている相手がいたのに、だ。
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