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唐沢雄吾とつきあい始めたのは、私が専門学校を卒業するちょっと前だった。
私と同じ年ではあったけれど、当時、彼は大学生だった。
だから私が先に学校を卒業して働きだしたとき、雄吾はまだ大学生だった。雄吾が大学を卒業すると同時に私たちは同棲を始めた。
雄吾は私のために一生懸命、いろんなことを考えてくれていた。
結婚を考えている節も何度か聞いた。それは嬉しいことだった。ただ、雄吾と私の生活時間はひどくズレていた。
IT業界で働く私は、朝早かったり、夜遅かったり、ときには数日帰らないこともあった。公務員の雄吾は、だいたいが規則正しい勤務時間だった。同棲しているのに会わない日が続くことも増えた。
幾度かの喧嘩を繰り返した末に、同じ未来を夢見ることができなくなった私たちは別れた。
「家賃は払ってほしい」と言ったわけではないけれど、幸せだった月日の慰謝料とでもいうように「あと三ヶ月だけ半分の家賃は払うから」と雄吾は、実家へと戻っていった。
そんなわけで、私は三ヶ月のうちに新しい引っ越し先を探さなければいけない。この部屋の家賃を一人で払い続ける余裕はないし、何よりこんなスカスカの部屋に住んでいても気分が晴れることなんてない。
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