ツミコイ

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なんとなく、わたしに手を出さない理由もわかる。わたしには弓道がある。今度の大会で、順当にいけば、全国大会にだって出られる。そういう生徒は大切にされるのだ、きっと。教師から。生徒から。近所の人々から。 期待に応えなければ、という考えは、正直ない。薄情なやつだなと自分でも思う。けれど、無いものは無い。弓道は、自己を肯定できる要素でしかない。こんなわたしでも、いても良いのだと、期待されているのだと。認められている気がしたから。 「あはは、おま、やめろって!」 階段を上がると、踊り場で男子が二人、ふざけ合っている。どちらも同級生。片方はクラスメイトで名前は知っている。染矢だ。いつもお気楽そうで、よく笑っている。仏頂面のわたしとは正反対のタイプ。染矢の背に、もう片方の男子が無理矢理、乗ろうとしていた。おんぶ、だろうか。
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