軍師の嫁取り 8~戦の前には絆あり~

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城門にて、またもや、孔明と、徐庶(じょしょ)は、立ち往生している。 交代時間が来たようで、先ほどの衛兵と人が異なっていたからだ。 仮にも、州の顔となる城の門を、夜間に、開けるものではないと、門番は言い張る。 まあ、それが、正しいのだが、ならば、張飛は、相当な事を易々とやらかしている事になる……。 二人は、改めて、張飛の凄さを痛感したが、今は、それどころか。とにかく帰りたいのだと、説得してみたが、衛兵は、頑として動かない。 「いやー、お勤めが、長引いてしまってなぁ、頼む、門を開けてくれ」 徐庶が、泣きついた。が、結果は何一つ変わらない。 「はあー、このままだと、泊まりと、いうことですか。これは、黄夫人に、何を言われる事やら」 孔明の、愚痴りのような、呟きに、衛兵が、食いついた。 「……黄夫人というと……もしや、黄承彦(こうしょうげん)様の……」 「おお、そうだとも、こちらは、黄承彦様の娘婿殿だ。ちなみに、私は、従者。よって、無事に、御屋敷へ、婿殿を連れ帰らなければ、婿殿が、失踪しただのと、街中、大騒ぎになるぞ?」 言って、徐庶は、ニヤリと笑った。 その笑みに、衛兵は、何か察したようで、瞬間、ひるんだ。 「まあ、お互い、宮仕え、色々とあるわ。しかも、宿直となると、御主も、きついよなぁー」 と、再び懐に手をやると、銭を取り出し、そっと、衛兵へ手渡した。 「うむ、そなたらも、長々とお勤めご苦労」 などと、衛兵は言いつつ、握らされた銭を確認している。 「おい、門を開けてやれ」 ──こうして、二人は無事に、帰路についた、はずだったのだが……。 「孔明よ」 徐庶が囁く。 うん、と、孔明も頷く。 「つけられておるな」 さて、と、徐庶は、考えを廻らせた。 「徐庶よ、夜の賭場は、更に、盛り上がるのだろ?寄っていかないか?」 ん?と、首を捻りつつ、徐庶は、おお!その手があった、賭場だ、賭場だ!と連呼した。 「孔明よ、お前は、とにかく、黙っておれ!いいな!お、それと、さっきから渡している、袖の下、後で、きっちり、頂くからな!」 お前の為に、余計な出費をしてしまった。賭場で一儲けも悪くない。などと、徐庶は、ご機嫌な振りをして、さあ!行くぞ!と、馬胴を蹴った。 駆けながら、徐庶は、孔明に言う。 「きっと、つけて来た奴は、先回りしているはずだ、お前は、双六でも、やっておれ、その隙に、親分と、話をつける」 「徐庶、何の話をつけるのだ?」 「なっ!!お前、どうゆうつもりで、賭場へなどと言ったのだ?!」 「いや、夜は更に盛り上がると、言っていたから……どうせ、黄夫人に、帰りが遅いと叱られるなら、楽しんで帰った方が良いかと思って。それに、つけて来ている者も、諦めるだろうし……」 妙な持論を展開しようとする、孔明に呆れた徐庶は、黙って、馬の速度をあげた。 背後から、おーい!おーい!と、孔明の、声がするが、知ったことかと、徐庶は、賭場へ向かったのだった。 そして、賭場に着いたのは良かったのだが……。 どこかで、聞き覚えのある声が、異常に、響き渡っている。 まさか……。 と、徐庶が目を凝らすと、その、まさか、だった。 「なあ、もう、なんで、皆、馬を飛ばすのだい?まったく、ついていく、こちらの身にもなって欲しいのだが」 ふうふう、言いながら、孔明は、賭場の入り口で、佇む徐庶に、語りかけた。 「孔明よ、いいのかよ、あれ」 「ん?」 徐庶の指差す先には、やられたっー!と、荒ぶれる、黄夫人こと、月英の姿があった。
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