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 乳首年齢?  そんなものはただの一度も聞いたことがない。  説明には男性にも乳がん発生のリスクがあるが、女性に行うマンモグラフィー検査が困難なために開発された診断方法と書いてはいる。  しかし乳首年齢って何だよ。  人それぞれ適正な乳首年齢があるのか?  僕は笑いをかみ殺しながらインターネットブラウザを開き、乳首年齢診断について検索した。  するとまあ出てくるわ出てくるわ、懇切丁寧に乳首年齢診断の説明がされているサイトが画面を端から端まで埋め尽くした。  僕はそのなかのひとつ、診断の方法が写真付きで載せられているサイトをクリックした。  かわいくデフォルメされた医者のキャラクターが、笑顔で乳首年齢について説明している。  画面を下に移動させると、そこには診断の手順と用いられる機器について写真と共に説明がされていた。  思わず声が漏れそうになった僕は、反射的にスクロールを止めた。  診断① 毛穴の診断 減圧式吸引器を用いて乳首を吸い上げ、毛穴を見ます  診断② 硬さの診断 シリコンの棒を用いて乳首・乳輪の硬さを見ます  僕の鼓動はおかしなことになっていた。  嫌な予感が全身を駆け巡り、左乳首がガチガチに収縮していくのが分かる。 「普段はクールなのに、私の前じゃこんな可愛い声出しちゃうんだ?」  耳元でエリカの甘い声が聞こえたような気がして、僕は思わず振り向く。  当然のようにそこには誰もいないのだが、僕の背中はすでに汗でぐっしょりと濡れ始めてしまっていた。  まずい! この診断方法は実にまずい!  呼吸が荒くなるのが自分でもはっきりと分かった。  なぜならば僕の左乳首は、超が付くほどのドSでテクニシャンだった元カノの木原エリカによって見事に開発されてしまっており、別れて半年経った今でも吉本新喜劇の乳首ドリルを見るだけで身体が反応するほど左乳首だけが敏感になってしまっていた。  正直言って、乳首を吸引されたりシリコンの柔らかい棒でつつかれたりしたとき、あられもない声を押さえる自信がまるでない。  畜生、いったいどうやったら声を我慢できるんだ……。  仕事そっちのけで頭を抱える僕の目に、まるでとどめを刺すかのように衝撃的な一文が飛び込んできた。  診断③ 励起の診断 鳥の羽を用いて乳首が励起するまでの早さを見ます  最悪だ!  最っっっ悪だ!  よりによって鳥の羽だと?  それはエリカがいちばん得意だと自負する攻め技で、僕が今までの人生でいちばん感じまくった、フェザーさわさわの手法と一緒じゃないか!  文字列だけで左乳首が痛いほど硬くなる。  画面に映る羽根を見ながら、赤や緑の柔らかい鳥の羽で羞恥心という言葉がどこかに飛んで行ってしまうぐらいエリカに喘がされたときの苦い記憶がまざまざと蘇る。  それにしても。  それにしても、だ。  この展開は実にまずい。  僕は間違いなくこの診断で大喘ぎしてしまう。  絶対に、んあっふぁああ! とか大声で口走ってしまう。  そんなことをしてしまったら、せっかくここまで5年も築き上げてきた僕のクールなイメージも崩れて、きっと五十嵐さんからの評価もダダ下がりしてしまうに違いない。  くそ、エリカがまだここにいたら文句のひとつでも言えたのに、春先にさっさと退職して連絡もつかなくなってるのだから本当に救えない。  何であいつは俺にこんな特殊性癖だけ残していなくなっちまったんだよ!  焦りと羞恥心で混濁する頭で僕は状況を打開する方法を懸命に考えた。  画面では立派な大胸筋をした男性がどっかりと椅子に座っている。  鍛え上げられ、張りのある筋肉は光を反射して輝いているように見えた。  胸を、鍛える……?  脳裏に僅かに光が灯るのが分かった。  筋肉が鍛えられるのなら、もしかして乳首も鍛えられるんじゃないか?  その考えに至ったとき、僕は引き出しから虫刺されの薬を取り出して立ち上がっていた。
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