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『失望させないでくれ。』
父の声が頭の中に響く。父に失望したのは私だ。そしてレノにも。
彼は私に顔を見せてさえくれず『別れよう。』と繰り返すのみだった。彼の部屋のくもりガラスの窓の向こうにいるのは彼によく似た声をした別人なのではないかと思った。
私が逃亡したりしたら島の皆が大変なことになる。けれど水道・電気と物資を止めるなんて脅しに違いない。もし本当に止まっても別の島や内地まで逃げればいいだけの話だ。
けれど、大切な人達に裏切られた絶望は私から生きる気力を奪っていた。
───お母さんに会いたい。きっと優しく抱きしめてくれる。
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