演汁

「一週間後に結婚が決まった。荷物をまとめておけ。」

母の仏壇の花を取り替えていると長の家にある集会所から帰ってきた父がそう言い放った。

「どういうこと！？意味わかんないよ！」

「船着き場で言われた通りだ。お前はあの人と結婚して隣の島で暮らす。」

「何言ってんの！？私はレノと結婚するって島の皆も知ってるじゃない！」

「長・・・レノのおじいさんも了承したことだ。」

「嘘でしょ！？だってじいちゃんは・・・。」

この辺りの島はまとめてひとつの町となっていて町役場は隣の島にあるが、この島の実質的な長は一番古くからこの島に住んでいる一族の現在の家長であるレノのおじいちゃんで、私達が結婚するのを楽しみにしてくれていた。