演汁

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「お、父さん・・・。」 痛む頬を抑えて父を見ると彼はハッとしたように私を殴った自分の手のひらを見つめた。寡黙な父だったが殴られたのはこれが初めてで、私の中で何かがキレた。 「絶対に結婚なんてしないから!レノだってそんなこと許すわけない!」 「あいつは賢いからな。ちゃんとわかっていた。お前とは別れると。」 「そんなの嘘だよ!!だって私達は本当に・・・。」 「お前達の愛が本物であっても大人の世界では、特にこの辺りではどうしようも出来ないこともある。恋愛は所詮遊びなのだから自由だ。でも結婚となると当人達だけのものではない。自分が大人だと言うのなら、ちゃんと大人らしく振る舞うことだ。」 「そんなの・・・!」
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