鈴蘭とタンポポ

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鈴蘭とタンポポ

彼女の名前は“鈴蘭”という。 もちろん僕の彼女。 なんてね。僕が一人でそうだったらいいのにと思っているだけなんだけど。 名前だけじゃなく、顔も可愛い。 知り合ったのは今通ってる夏季講習の予備校。 訊くと第一志望の大学が同じだった。 僕は俄然やる気が湧いてきた。         しかし鈴蘭の頭の良さには驚かされる。 全国統一模試で、たいてい30位内に入っている。 焦る。 僕の現状は、志望校の合格率は30%辺りをウロウロするのが続いてる。 何としても鈴蘭と同じキャンパスに通いたい。      その日の講義が終わった。 僕たちは予備校を出て駅に向かって歩いていた。 「あっ!誠、メガネ!」 「えっ?あっ!ホントだ。教室に忘れてたきた。いいや、戻るのが面倒だから。誰も取らないだろうし」 途中に『自然の食卓』という店があった。 無農薬で育てた野菜なんかを売っている。 チラッと見たら野菜以外にも色々扱っているらしかった。 「誠、こういうお店に興味があるの?」 「いや、特別には無いよ。ただあれが目に付いたんだ」 【タンポポコーヒー】 「どんなのかなぁと思ってさ」 「タンポポの根で作るのよ。味はコーヒーにはほど遠いわよ。お茶に近いと思う」 「飲んだこと有るんだ」 「一度だけ。カフェインが苦手な人には人気があるみたい」 「ふ〜ん。ノンカフェインなんだ。試しに買おうかな」 鈴蘭が目をパチクリして僕を見ている。 「あ、飲むのは僕じゃなくて姉。いまお腹が大きいんだ。だからカフェインはよくないらしいからこれを、ね」 「優しいね、誠は」
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