鈴蘭とタンポポ

3/9
前へ
/9ページ
次へ
見るたびにそう思う。 僕は僕で早く部屋着になりたい。 洗濯機に入れ忘れて、シワっぽいグレーのTシャツ、ヨレヨレのスエット。 「同じ格好ばかりして。男臭いから早く脱いでちょうだい!」 口癖になってしまった母の言葉。 僕は黙って自分の部屋に入り、今日やった講義の復習を始める。 僕は薬学部に入りたいと思っている。 薬剤師になることが目標だ。 以前に僕は、ある病気になってしまったことがある。 入院まではいかないが、日常生活を送るのが、かなり辛かった。 とにかくダルいのだ。 何もする気力がなくなる。 通院はしていたから薬は飲んでいた。 それも、かなりの量の。 しかし治らない。 別の病院に変えた。 医師が処方してくれる薬も変わる。 けれど結果は同じ。 病院は4回変えた。 そしてその4度目の病院の医師が出してくれた薬がドンピシャだったのだ! 日に日に体は軽くなり、ダルさは消えた。 薬は嫌いだが、このときばかりは、 「すごい!」 そう思った。 本当は医師を目指すところかもしれないが、そこまでの頭脳は僕にはなく、医学部に行く経済的余裕も家にはない。 患者に薬を渡すだけではなく、不安に思っている人にはキチンとした説明をし、少しでも不安を取り除いてあげたい。 それが出来る薬剤師になるのが僕の夢だし希望だ。 以前、この話しを鈴蘭にしたら、急に泣き出したことがあったっけな。 あの涙には、どんな意味があるんだろ うか。 何故か訊けなかった……。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加