嫌いなもの

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「おい!いつまでキスしてんだよ!泉から退け!」 「はっ、離れてください……!」 「き、す……めっ!」 「なんだなんだ〜? 面白いことが起きてんじゃねえか〜!」 「い、泉先輩がキスされてる………センシティブだ……」 「み、見るな水羽!お前が泉に惚れたら困る!」 「……………チッ」 さっきからずっと騒がしかったとはいえ、やっとこの瞬間に周囲の声が自分の耳に届いた。 その言葉を理解した途端、衝撃で瞑っていた目を急いで開ける。 至近距離にある、キラキラと輝く宝石のような瞳。 透き通るような真っ白な肌。 その肌に影を落とす、真っ白な髪。 そして──触れ合う、やわらかな唇。 「………ッ!?!?!?」 「…………」 ギクリと硬直して、体が動かなくなった。 キス、してしまっている。 あの堤下くんと。 早く離れなければと思うのに、体が思うように動かない。 周りからの声がどんどん騒がしくなることも俺の混乱に拍車をかけてしまい、キスした状態のまま頭がぐるぐる回る。ついでに目も回ってきた。 混乱した思考の中、いっそのこと誰かこの状況をどうにかしてくれと思った瞬間。 突如として肩を掴まれて、覆い被さっていた体が堤下くんから引き離された。 「……………いい加減、離れろ」 「ッ、わ…………す、すみません……」 体を引き離された力の流れに逆らうことができずに、そのままどすんと後ろに尻餅をついた。 そんな俺のことなんてどうでもいいのだろう、風紀委員長は俺のことをチラリとも見ずに、土の上に仰向けで倒れていた堤下くんを優しく抱き起こして、髪や服についた土を優しく払っている。 その手つきのこの上なく優しいことよ。 刮目しておこう。 「怪我は?」 声、やさッ、しッ。 さっき俺に言った『いい加減、離れろ』のときの声と全然違う。別人レベルに違う。ビックリした。 「大丈夫。どこも怪我してないよ」 「……お前はいつもそうだ。自分のことを犠牲にして、」 「お説教なら聞かない。言いたいことはわかるけど、助けなきゃ崖から落ちてた」 「だが」 「だがは聞かない」 「でも」 「でもも聞かない」 「だって」 「だっても」 夫婦喧嘩だろうか? 尊い。 おっと、失礼。 本音が出てしまった。
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