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(もうやめてくれッ)と頭を抱えているもう一人の自分を宥めていると、俺の発言で周りの声が更にヒートアップしていた中で、ひとつの声が一際大きくこの場に響いた。
「わ、わたくしが……!」
その声が聞こえた途端、他の人たちもギャーギャー言うのをピタリと止めた。
普段あまり大きな声を出すイメージのない人だったからか、声を発した本人である副会長を他の人たちが不思議そうに見つめる。
「私が、しております……」
「…………え?」
「軽いキスですが、自分の意思でしておりますから、貴方は責任など取らなくて結構です。取るなら私が取りますから」
少し恥じらいつつも、それでもハッキリとそう言い切った副会長のその様子は、さながら精一杯威嚇してくる子猫のようですごく可愛い。
推しではないけど世界に感謝したくなるくらいの可愛さだ。
世界よ、ありがとうございますッ。
(え………というか、今、何と言った……?)
う、うおおおおおおおッ。
副会長の可愛さに一瞬我を忘れていたけど、すぐにその発言を脳が処理して思わず雄叫びを上げそうになった。必死に抑えたけどそれくらい興奮した。
(まじッ、かッ。まじかッ。この2人がキスしているのかッ。嘘だろッ。ヤバッ、鼻血出そうッ)
しかも今の発言的に、副会長が自ら望んで堤下くんにキスしたんだろう。何それ萌えるッ。
ど、どういうシチュエーションだったんだろうかッ。すごく気になるッ。
(………でも副会長はもう口を開けるつもりがなさそうだし、これ以上追及したところで話してくれない、気がする………だったらここは潔く引いて、他が釣れないか動いた方が………)
そう思った瞬間に、無意識に口から言葉が漏れ出ていた。
「軽いやつなんですよね……?じゃあノーカンなんじゃ……深いやつじゃないと…」
もはや自分が何を言っているのかわからないまである。
さっきから何故こうも頓珍漢な言葉ばかりが出てきてしまうのだろうか………自分の頭が大層残念であることだけは確かだ。
顔を顰めた風紀委員長に頬をみょーんと伸ばされている堤下くんの顔を見てみろ。
正体を見抜かれているぞ。お前腐男子だろって顔をなさっている。すごく笑顔だけどそんな圧を感じる。
(でもすみませんッ、抑えられないんですッ)
この腐男子としての欲求がッ。
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