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「昔!初等部のとき!高熱でぶっ倒れて保健室のベッドで休んでて!そんで熱のせいで記憶曖昧だけど、泉の唇がぷるぷるでなんか桃みたいに見えて!喉乾いてたから齧り付いて、たぶん10分ぐらいずっとちゅぱちゅぱしてた!事故じゃなくて俺の意思だし!軽いやつでもねえし!?もちろん(熱のある俺を突き飛ばせるほど泉は酷くなれねえから)抵抗されてもないし!?だから俺が責任取るからお前は引っ込んでろ!」
池田、すごく良い情報をありがとう。
でも後ろ。後ろがやばい。
どちゃくそいい笑顔の堤下くんが、池田の肩にポンっと優しく手を乗せる。
それにハッとした池田は、ギギギ……と壊れたおもちゃのような動きをしながら振り向いた。
「い、泉………違うんだ……これは、あの……」
「高熱で記憶が飛んでると思ってたから不問にしてあげてたけど、覚えてるなら話は変わってくるよね」
「あ、あの……泉、さん……?」
「お化けなんかよりももっと怖いもの、味わわせてあげよっか」
「いっ、いやいやいやいや待って待って待って!!!助けてっ、助けてーーーー!!」
池田は物凄い力で森の中に引き摺り込まれていった。もちろん堤下くんの手によって。
情けない顔をしながらこっちに手を伸ばしてきた池田のことを、助けようと動いた人は誰もいなかった。──各々、思うところがあったのだろう。
副会長はむう、と膨れて。
会計は眉間に深い皺を刻んで。
書記はぎゅっと口を引き結んで。
風紀委員長はすぅ、と目を眇めて。
各々が、いろいろ思うところがあるような表情でその場に佇んでいた。
(そういう表情も萌えでしかないッ)
自覚がある人もなさそうな人も、どっちも美味しいよな。しっかり目に焼き付けて、後で思う存分に妄想しよう。
あと、先生のそれはどういう表情ですか? 目尻を下げた優しげな顔で2人が消えた森の方を眺めていますけど。
あと、「………俺以外にも、そんなにキスしてたのか……」と呟くように言った会長に、雨色がガンを飛ばしているのは大丈夫だろうか。しっかり尻に敷かれていると聞くし、後で絞められるのではないかと俺は思う。お疲れ様です。
(腹が満たされた………)
これだけ供給していただけたのだから流石の俺も満腹になったようで、もう一人の自分がホッと安堵の息を吐いた。これでもう自我を失った欲望が暴れ回ることもない。
ということで、腹一杯食べた後は食後の挨拶を。
「ごちそうさまでした………」
両手をきっちりと合わせて静かに拝んだ。
俺の推しが今日も絶賛【総愛され】であることを確認できて、とてつもなくいい日になりました。
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