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えんなの人生を請け負った、なんてつもりはない。
ただあの笑顔にいつまでも縛られていたい。
それはわたしたちふたりだけの、誰にも介入できない時間。
きみの特別な存在は、わたしだけしかいない。
すべては、そのために。
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アカデミー賞主演女優賞、作品賞。
朝ドラ主演女優。紅白司会者。
大河ドラマ主演女優。ハリウッド進出。
今までにもらった花束で作ったいくつもの押し花額。
演じてきた作品の台本。わすれられない名前たち。
わたしは、えんなのことが好きだった。
言葉を選ぶとするならば、きっと恋をしていた。
ただえんなに笑って欲しくてきみになった。
「に、にち、日曜劇場、W主演、だね」
「喰われないよ。わたしのほうが芸歴長いもん」
「ぼ、ぼ、ぼくだって、たっぷり、き、きみのことを愛するよ」
「——— あ、笑った」
「あ、やば、やばい。わ、笑わない役なのに」
「腕が落ちたね、“朝日”」
また笑ってくれたから、やっとわたしの夢が叶ったよ。
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