運命の王子様はすぐそばに

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 私は咲良愛姫(えらあやめ)。  所謂、ホワイト企業といわれる会社に勤めているが、私自身が完璧主義者のため個人的に社畜化して働いている。自分の仕事以外も熟すため「グレーさん」と影で呼ばれている。  なぜグレーさんかというと、ホワイトな会社を保つためにたった一人ブラック社員のように働いているかららしい。皆さんそんなあだ名を考える時間があったら仕事を熟してほしいものですが。  0:00a.m.  腕に付けているApple Watchがブルッと振動する。私の推している、ボカロPでもあり歌い手さんでもあるミキミキくんのインスタライブがスタートしたと通知が届いた。  毎月第一週の金曜の0時に作詞作曲した曲をギターやピアノを使って弾き語りをしてくれる。ちなみに顔出しはしていない。  ワイヤレスイヤホンを鞄から出し、インスタライブを大音量で聴きはじめる。いいなって思うタイミングでハートボタンを押してコメントを入れる。アカウント名は本名にしている。だって名前を覚えてもらいたいから。  私はこの月に一度のインスタライブを楽しみにしている。このインスタライブが部屋でゆっくりと聴けたら幸せなのにと思いながら今は会社で仕事をしている。  私以外の社員たちは定時で帰っていった。ホワイトな企業、定時で帰宅できるのがウリの会社のためスケジュールも納期も守らない者が多い。そのため私のような完璧主義者の人間に残った仕事が回ってくる。会社も納期を優先するため残業を黙認している。  0:30a.m.  ミキミキくんの「今日もありがとう! みんな大好きだよ!」という言葉でインスタライブが終わる。私は「ミキミキくん! 今日もありがとうございます! 大好きです♡」とコメントを書く。  今日は金曜のため朝まで仕事をするつもり。オフィスカジュアルの服装からルームウェア、ふわふわのパーカーにふわふわのショートパンツに着替え、ヘアバンドで前髪をあげて準備完了!  ミキミキくんがインディーズで出している音楽を大音量で聴きながら仕事再開。    仕事をしていると、トントンと肩を叩かれる。 (ん? 誰もいなかったよね? 気のせいかな?)  と思い気にせず仕事をしていると、またトントンと肩を叩かれる。 (え? ちょっと待って? 幽霊? だとしたら気が付かないフリをしないと)  何事もなかったように仕事を続けていると、今度はワイヤレスイヤホンが外され……。 (いやいや、幽霊さん。悪戯にも程があるでしょう!)  後ろを振り向くと。
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