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☓月12日。
0:00a.m.
12回、時計の鐘の音が鳴り響く。
「お嬢さん! 君が探しているのはこのハードディスクですか? それとも俺ですか?」と王子がエラの前に現れる。
「もちろん! ハードディスクです!」と大きな声で叫ぶエラ。
「まあそうでしょうよ。たまには俺の会話にノッてくれてもいいんじゃないかな」と王子はブツブツと喋っているがエラの耳には入らない。エラはハードディスクを手に取り、再度映像の調整をはじめる。王子も一緒になり調整を行い、無事完成させる。
「王子先輩、ありがとうございます」
「灰菁さんのためなら頑張りますよ! ということでお礼のキスを」とウインクをしながら人差し指で唇をトントンとしてキスのおねだりをする王子。
「私、好きな人がいるんでそういうのではないお礼をさせていただきますね」
「灰菁さん、好きな人いるんだ。俺の方が紳士イケメンでしょ? 俺にしない?」
「先輩のそういうところが好きじゃないです。でも仕事が出来るのはかっこいいです」
「かっこいい! じゃあ俺でいいじゃん!」
「今日はというか金曜から本当にありがとうございました。もう終電なので帰りますね」と言ってオフィスを出ていくエラ。
今の時刻は2:00a.m.
終電は1時間半前に終わっている。
タクシーを拾おうと駅へ向かっていると、バイクに乗った人が声をかけてくる。
「こんな時間に一人で歩くのは危険ですよ。よければ家まで送りますよ」
エラは声の主が未来だと気づき「あなたはいつも私の王子様ですね」と言ってバイクに乗り、未来の背中に体をあずける。
(うふふ。いい感じよ! 未来!)
(なんかストーカーとか思われないか心配だよ、おばあさま)
(大丈夫よ、多分)
(多分って……)
未来はバイクを走らせる。
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