14人が本棚に入れています
本棚に追加
理由がある
3年生になって、クラス替えがあったが、涼は、また1,2年生のときと同じ岸辺先生になってしまった。
また1、2年生の時のように、じっとおとなしくしていればいいんだ。そう思うしかなかった。
ある日、クラスで1番の乱暴者だと思われている宮本君がお休みをした。
先生が
「誰か、宮本君のお家にプリントを届けてくれないかな?」
誰も返事をしなかった。
怒りんぼで嫌われ者の宮本君の家へは誰も行きたがらない。
ひとりの子が
「松井さんの家が1番近いです。松井さんに行ってもらったらいいと思います」
「えっ? 私が?」
思わず呟いてしまった。嫌ではなかったが、クラスの子の家などボクチンや文クンの家以外は、行ったことがなかった。
「それじゃあ松井さん、お願いします」
仕方なくプリントを受け取って、先生から宮本君の家の場所を教えてもらい、行くことになった。
プリントだけ置いてくればいいんだと渋々受け入れた。
宮本君のお家は、涼の家から5分ほどのアパートだった。
トントン! トントン! 玄関のドアを叩いたが、応答がない。
仕方なく帰ろうとしたとき、
「あれ? 松井?」
宮本君が後ろに立っていた。
「あのね、これ今日のプリント」
それだけ言ってプリントを渡して帰ろうとしたとき、宮本君の頬に傷があるのを見てしまった。
最初のコメントを投稿しよう!