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わんぱく三人組
同い年の3人組が、いつもの秘密の場所へ行く。
東京湾を目の前に、隅田川の支流沿いの下町。
そこは、自宅から少し離れたコンクリート会社の砂利置き場。
「早くおいで!」
声をかけたのは、3人組の大将的存在の女の子、松井 涼。
遅れて駆けてきたのは、2人の男の子文クンとボクチン。
昨日ここへ来たときには、作業している人がいて入れなかったが、今日は誰もいない。
その砂利置き場で、巨大なピラミッドのような砂利山を、駆け上がる競争をしようとやって来た。
涼は、大きな砂利山の周りを一周して、なだらかな傾斜で登れそうな場所から
「ここから、よ―いドンッ! で一気に登ろうよ!」
他の2人は
「わかった! きょうそうだ〜い!」
「よ―い! ドンッ!」
掛け声と共に、3人は砂利に足を取られながらも一気に登りつめた。
1番になった涼が叫んだ。
「わ〜い! りょうちゃん! い・ち・ばん!」
何度も砂利山登り競争を繰り返し、灰色の砂だらけになった足も重くなった頃、砂利山の天辺から薄っすら紅色に染まった夕焼け空が見えた。
「ご飯の時間だから帰ろう」
と、涼が2人に声をかけ、砂利山を下ろうとしたとき、ズブズブズブッと、涼の足が砂利の蟻地獄に引き込まれた。
必死にもがき、足だけは抜けたが、サンダルがズズッズズ〜と砂利の中に沈んで消えた。
泣きそうになりなからも、涼は、仕方なく片方のサンダルを引きずって帰路についた。
他の2人も涼の後からゆっくりついて歩いて来た。
途中でボクチンが
「りょうちゃん! ジャンケンして負けたほうが、サンダルの片方を渡すことにしよう」
涼は
「いいよっ! りょうちゃんが悪いんだから・・・このまま家まで帰るよ」
文も
「ジャンケン! ほら! ジャンケン!」
大きな声で数を数え合い、50歩あるく度にジャンケンして、優しい男の子と笑いながら帰路に着いた。
涼は帰宅すると、母親にサンダルを無くしたことではなく、危険な砂利山に行ったことを、しこたま叱られた。
それが、保育園の頃のわんぱくな涼のある日の出来事。
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