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僕が病院に担ぎ込まれ、この大部屋に来てから五日経つが、一度も顔を見たこともなければ、声を聞いたことすらないのだ。
隣の患者って、どんな人だろう‥‥?、
ベッドの周りをぐるっと囲えるよう、吊るされたクリーム色のカーテンを、四六時中ずっと閉めている。
少なくとも僕が入院してからは一度も開けたことがないのだ。
このカーテンの中にいるのが、どんな人なのか? 何歳なのか? そもそも 何で入院しているのか?
全くもって分からないのだった。
トイレに行く姿も見たことがないのだ。
「ひょっとしたら、そうとう重篤で、排泄行為も寝たままかも‥‥」
それも考えられるが、私には触れるな!――と言わんばかりの鉄壁感が、そこにあるように思えた。
それが意図してか、どうかは分からないが‥‥。
ただ、一つだけ分かっていることがある。
病室の入り口のネームプレートに『サトウ ミノル』と明記してあることだ。
しかし、分かったことはそれだけで、結局、いまだ正体不明だ。
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